高速道路無料化について考える
2009.08.30決戦で自民党が大敗し、日本の政治は民主党政権に移って大きな転換点を迎えている。その中で民主党が目玉のひとつに挙げていたのが高速道路の無料化である。
以前は高速道路が無料化されたらどんなにすばらしいことかと、それこそ手放しで歓迎していたのであるが、そう無条件に無料化賛成とまではいえない状況が見えてきている。
それについては現在の公団民営化を主導した猪瀬直樹氏のコラムを読むにつけて思わず納得させられてしまうのだけれど、一方で森永卓郎氏の主張を読むとやはり無料化は実現すべしの気持ちが強くなる。主張によって利権を得るわけではない人間の言葉だけに、説得力はともにある。このお二人に朝まで討論してもらうのが一番の近道なのだが、ここはひとつ自分なりに考えてみたい。
そもそも猪瀬氏の高速有料維持の根本は高速道路料金とはいわゆる「特急料金」である、というもの。無料化によって高速道路が大渋滞すれば、結局は高速道路の有益性が損なわれるということだろう。たしかにその通りだと思う。減収分の財源やら天下り等々の利権問題など、他にも論点となる部分は数々あるが、とりあえずこのもっとも重要な基幹部分について考えてみたい。
果たして大渋滞は慢性化するだろうか?
もちろん大都市圏に限っていえば、それは避けられないだろう。大都市圏(現在の一律1000円が適用外の範囲。東名なら厚木-東京間、中央なら八王子-高井戸間等)に限っていえば、たとえ無料化が実現したあかつきにも有料システムを残すべきだと思う(個人的には厚木-東京間を利用することが多いので、全部無料になった方がありがたいことはたしかだけど……)。
僕自身、シルバーウィーク期間中に中央道を利用したけれど、場所によって渋滞の激しい場所がいくつかあった。
しかし現在の高速道路渋滞の原因のひとつには土日祝祭日1000円というシステム自体にも問題がある。つまり長距離を移動する車はどんなに渋滞していても途中で一般道に下りて乗り直すということができない。一度下りれば乗り直すたびに1000円がよけいにかかるからだ。
先日、新聞にシルバーウィーク期間中の渋滞によりCo2の排出量が増加したという記事が載っていたが、なにやらこういう記事に流されて無料化はまずいんじゃないか?的な空気が漂い始めている社会的雰囲気を感じる。
が、実際のところ、本当に渋滞したのは全体の中の一部であって、高速道路のあらゆるときろで渋滞が起こったわけではない。地方の田舎では連休中でも車の数がまばらという場所はたくさんあったようだ。
現在は曜日を制限しているから一極集中で渋滞も起こるが、無料が恒常化されれば、少なくとも現在のような渋滞はなくなるはずだ。なにより平日に遊びに行ける人間は限られている。長距離を走るでかいダンプやトラックが高速に移るから一般道はむしろ渋滞が緩和される可能性もある。市街地の安全性が増して、結果として一般道路の傷みも緩和されるはずだ。高速道路を走る車の量が相当増えたとしても、少なくとも地方の高速道路なら信号や人の交通に煩わされない分、耐え難い渋滞にはならないだろうと考える。さらに無料化によって高速への出入口も格段に増やせるはず(料金所を造らなくてよいのだから)で、利便性は現在より格段に向上するだろう。
全国には、完成当初に有料だった高速道路がその後に無料化された例がいくつかある。たとえば静岡の藤枝バイパスなどは平成17年に完全無料化されたが、それによって大きなメリットを生んでいる。もちろん、それによってバイパスの維持が行き詰まったという話も聞かない。もちろん、全国にまたがる高速道路と地域に密着したバイパスを同一に考えることはできないかもしれないのだけれど、個人的にはいまも無料化賛成である。
ただ、一方で割を食うことが避けられない電車やフェリーの業界に対するフォローは重要な課題になりそうだ。これまでの秩序を壊すということは、それに伴う痛みとカネが間違いなく生じる。民主党に課せられた課題は難問だらけだ。
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